コロナ罹患とワクチン接種の死亡率比較 [v2]

和田健太郎, 和田さつき

2021-07-18

本稿の目的

「重症化を防ぎ、死亡する確率を下げる」ことがワクチン接種の大きな効用の一つとして挙げられており、国民への早期接種が呼びかけられている*1。 その一方で、2020年から1年半あまりたった現在でもコロナ罹患による若年層の死亡例は少なく(20歳未満: 0人, 20代: 7人)、 重症化を防ぐ意図での若年層の接種は合理的なのか疑問が残る。 そこで本稿では、過去の日本における死亡者数のデータを用いてコロナ罹患後とワクチン接種後にそれぞれ報告された死亡数から死亡率を計算し、 コロナ罹患とワクチン接種のどちらの方が死のリスクが高いと言えるのかを年齢別に検証する。
以前の報告書との相違点は以下である。

  • ワクチン接種者として医療従事者が含まれていなかったため、見かけの接種者数が少なくなっていた部分の修正。
  • ワクチン接種後の死亡者として2回目の接種者も含まれていたため、見かけの死亡者数が多くなっていた部分の修正。
  • それぞれの死亡率の比較において、自然死亡率との比較を追加。

コロナ罹患後の死亡率

まず、コロナ罹患がどの程度生死に影響するかを自然死亡率との比較によって確認する。 2021年1月6日の政府からの報告書*2における年齢別の陽性者数と死亡者数のデータを用い、 コロナに罹患した場合(陽性と診断された場合)の年齢別の死亡率を以下に青色でプロットした。

これを平常時の死亡率(自然死亡率)*4*5と比較する。 東京都における死亡症例報告によると発症から死亡までの平均的な期間は17.1日*3となっていることから、 17日間での自殺や不慮の事故を除いた自然死亡率*6を以下に橙色でプロットした。

これら2つのグラフを比較すると、コロナに罹患した場合の死亡率は20代でも3万人に一人程度となっており、 20代の17日間での自然死亡率である18万人に一人と比較するとコロナに罹った場合は平常時より約6倍死亡率が高いことがわかる。

ワクチン接種後の死亡率

次に、ワクチン接種がどの程度生死に影響するかを自然死亡率との比較によって確認する。 ワクチン接種による死亡例報告書*7によると、 5月31日まで(過去の傾向から死亡報告には最大1ヶ月ほどのタイムラグがあるため、6月27日の報告書*7における5月31日までの接種者のみを適用) の1回目の接種で亡くなった65歳未満の人の数は19人、 65歳以上は203人。政府による医療従事者も含めた接種報告書*8によると、5月31日までの1回目の接種は65歳未満が419万人、65歳以上が703万人。 これらを、(20 + 64) / 2 = 42歳、(65 + 100) / 2 = 82歳相当のデータとし、 ワクチン接種後の死亡率を緑色でプロットした。

このワクチン接種後の死亡率を自然死亡率と比較する。ワクチン接種後の死亡までの平均日数は約5日であることから、 5日間での自殺や不慮の事故を除いた自然死亡率*6を以下に赤色でプロットした。 さらに、年代別データのない接種後の死亡率との比較のため、 65歳未満と65歳以上で自然死亡率の平均を取ったものを赤色点線でプロットした。

これら2つのグラフ(赤点線と緑線)を比較すると、ワクチン接種後の死亡率は5日間での自然死亡率と大きな差異がなく、 ワクチン接種が平常時より死亡を引き起こしているとは言えないことがわかる。

結論

以上の死亡率の比較から、コロナに罹患した場合には死亡率が平常時よりも約6倍になるのに対して、 ワクチンを接種した場合には死亡率は平常時と変わらないことがわかった。 つまり、死亡率においては、世代に関わらずワクチンは悪影響があるとは言えず、コロナに罹患した場合のほうがリスクが高いと言える。 とはいえ、実際に若年層においてコロナに罹患する確率を含めた死亡率は高いとは言えない(以下Appendixの自動車事故との比較参照)ため、 ここでは議論されていないワクチンによるデメリット(長期的な副作用、接種時の副反応、接種に要する時間) とメリット(ワクチンパスポート、罹患/発症の抑制)を考慮して接種を考えることが、将来的にも納得の行く決断につながると考えられる。

Appendix

データや処理スクリプト

本稿で用いたデータやその処理スクリプトはGitHubにて公開されている。

自動車事故による死亡率とコロナでの死亡率を比較すると?

概算ではあるが、自動車事故による死亡者数は歩行者の死亡に限定した場合、2020年の上半期で約300人*6、1年半(これまでのコロナ期間)に換算すると約900人となる。 これを総人口の12000万人によって死亡率を計算すると、 12000 / 900 = 13万人に一人という計算になり、 この一年間で歩行者として自動車事故でなくなる確率を茶色でプロットした。

これを(コロナ罹患かつ死ぬ確率) = (コロナにかかる確率) × (コロナ罹患後の死亡率) と比較する。 20代では1月6日時点で2人なくなっており、これは約1270万人 / 2人 = 635万人に一人の確率である。 これを世代別に一年間でコロナ罹患かつ死ぬ確率として紫色でプロットした。

このように比較すると、20代では、自動車事故で亡くなる確率はコロナで亡くなる確率よりも約50倍高い(=635 / 13)ことがわかる。 これを「若年層ではコロナでの死亡は無視できるほど小さい」と解釈する場合には、ワクチンによるメリットはそれほど感じないだろうし、 「自動車とコロナのどちらでも死ぬ可能性があったものを自動車だけに減らせる」と解釈する場合には、ワクチンによるメリットを感じるだろう。